歯ぐきが下がったとき、口の中では何が起きている?

歯を残すために知っておきたいこと

鏡を見ていて、

「前より歯が長くなったように見える」

そう感じたことはありませんか。

歯が本当に伸びたわけではありません。

歯ぐきが下がって、これまで歯ぐきに隠れていた部分が見えてきた可能性があります。

ここで多くの人は、

「もう年だから仕方ない」

と考えます。

確かに、年齢とともに歯ぐきの状態は変化します。

しかし、歯科医師として40年、さまざまな口の中を診てきた私からすると、歯ぐきが下がったという変化を、年齢だけで片づけてしまうのは少しもったいないと思っています。

なぜなら、歯ぐきが下がる理由は一つではないからです。

歯ぐきが下がる理由は一つではない

歯ぐきが下がる背景には、いくつかの要因があります。

歯周病が関係していることもあります。

一方で、歯ブラシを強く当てすぎること、歯の位置や歯並び、かみ合わせなどが関係する場合もあります。

つまり、

「歯ぐきが下がった=歯周病」

とは限りません。

ここは大切なところです。

見た目だけで原因を決めつけることはできません。

では、なぜ歯ぐきが下がることを気にする必要があるのでしょうか。

見えてきたのは「歯の根元」

歯の表面には、場所によって性質の違う部分があります。

歯ぐきに隠れている歯の根の部分は、普段見えている歯の表面とは違います。

歯ぐきが下がると、その部分が口の中に露出してきます。

すると、

「冷たいものがしみる」

「歯の根元に汚れがつきやすい」

「歯と歯の間にものが詰まりやすくなった」

といった変化を感じることがあります。

ここで、もう一つ考えてほしいことがあります。

歯を支えているのは、歯ぐきだけではありません。

歯の周囲には、歯を支える組織があります。

ですから、歯ぐきの見た目だけを見て、

「歯ぐきが下がったから歯が危ない」

と考えるのも、

「年齢のせいだから放っておけばいい」

と考えるのも、どちらも少し早いのです。

歯周病の場合は「歯ぐきだけ」の問題ではない

歯周病が進むと、歯ぐきだけではなく、歯を支えている組織にも影響が及びます。

歯と歯ぐきの境目にプラークがたまり、細菌の影響によって炎症が続く。

その状態が長く続けば、歯を支える組織にも変化が起こります。

ここで重要なのは、

痛みがなくても進むことがある

ということです。

虫歯なら「痛いから歯医者へ」という行動につながりやすい。

ところが歯周病は、かなり進行するまで強い痛みが出ないことがあります。

だからこそ、

「痛くないから大丈夫」

という判断だけでは、口の中の状態を正しく判断できません。

歯ぐきが下がったら、何を見ればいいのか

では、歯ぐきが下がったと感じたとき、何を確認すればいいのでしょうか。

私はまず、次のような変化を一つずつ見てほしいと思います。

  • 歯ぐきから血が出る
  • 歯ぐきが腫れている
  • 歯が以前より長く見える
  • 歯の根元がしみる
  • 歯と歯の間に食べ物が詰まりやすい
  • 以前より歯が動くように感じる
  • 口臭が気になる

もちろん、これらが一つあったからといって、すぐ歯周病と決まるわけではありません。

大切なのは、「以前と何か違う」ことに気づくことです。

口の中の変化は、突然現れるとは限りません。

小さな変化が積み重なって、何年か後に大きな違いとして現れることがあります。

歯を失うのは、歯が抜ける日からではない

今回のシリーズで私が繰り返し伝えていることがあります。

それは、

歯を失うのは、歯が抜ける日から始まるわけではない

ということです。

歯ぐきの変化も、その途中で現れる一つのサインかもしれません。

ただし、ここでも焦ってはいけません。

歯ぐきが下がったからといって、すぐに歯を失うわけではありません。

むしろ大切なのは、

「なぜ下がったのか」

「歯を支えている組織はどうなっているのか」

「口の中に炎症が続いていないか」

を確認することです。

40年診療してきて思うこと

歯科医院で患者さんの口の中を診ていると、

「もっと早く見せてもらえたら」

と思うことがあります。

これは、患者さんを責めているのではありません。

本人からすれば、

「痛くなかった」

「特に困っていなかった」

「年齢のせいだと思っていた」

というのは、ごく自然なことだからです。

だからこそ、私は「痛くなったら歯医者へ」だけではなく、

痛くなる前の変化にも目を向けてほしい

と思っています。

歯ぐきが少し下がった。

歯と歯の間にものが詰まるようになった。

歯磨きすると血がつく。

こうした小さな変化は、口の中から届く「ちょっと見てください」というサインなのかもしれません。

歯を残すために必要なのは、怖がることではない

歯ぐきが下がったからといって、怖がる必要はありません。

大切なのは、原因を知ることです。

歯周病が関係しているのか。

ブラッシングなどの刺激が関係しているのか。

歯の位置やかみ合わせが関係しているのか。

あるいは、いくつかの要因が重なっているのか。

原因によって考えることは変わります。

そして、歯を残すために必要なのは、何か特別なことを一度だけすることではありません。

毎日の歯磨き。

歯と歯の間の清掃。

そして、歯科医院で口の中を定期的に確認してもらうこと。

こうした小さな積み重ねが、何年後かの口の中を変えていきます。

歯を失う日は、突然やってくるように見えるかもしれません。

でも、その前には長い時間があります。

その時間の中にある小さな変化を見逃さないこと。


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