夏になると熱中症による救急搬送が急増します。しかし、多くの方は「めまい」「頭痛」「吐き気」が最初の症状だと思っているのではないでしょうか。実は、それらの症状が現れる前に、体が発している大切なSOSがあります。それが**「口の渇き」**です。
歯科医師として日々患者さんのお口を診ていると、口の乾燥は全身の健康状態を映し出す重要なサインだと実感します。唾液は約99%が水分でできているため、体内の水分が不足すると真っ先に分泌量が減少します。その結果、「口がネバネバする」「舌が乾く」「話しにくい」「食べ物が飲み込みにくい」「口臭が強くなる」といった変化が現れます。
この状態を「少し喉が渇いただけ」と軽く考えてしまうと危険です。脱水が進むと汗をかきにくくなり、体温を十分に下げられなくなります。その結果、体内に熱がこもり、熱中症へと進行するリスクが高まります。特に高齢者や小さなお子さんは喉の渇きを感じにくいため、自覚症状がないまま重症化することも少なくありません。
さらに、口の乾燥は熱中症だけでなく、お口の健康にも大きな影響を及ぼします。唾液には細菌の増殖を抑え、歯や歯ぐきを守る働きがあります。そのため唾液が減ると、虫歯・歯周病・口臭・口腔内感染症のリスクが高まります。また、歯周病による慢性的な炎症は全身の炎症反応にも関わるとされ、糖尿病との悪循環を招くことも知られています。
熱中症予防で大切なのは、「喉が渇いてから飲む」のではなく、「渇く前に飲む」ことです。朝起きたとき、外出前、運動前後、入浴前後、就寝前など、時間を決めて少量ずつ水分を補給する習慣を身につけましょう。大量の汗をかいたときには、水だけでなく電解質も適切に補給することが重要です。
毎日のセルフチェックとして、鏡で舌を観察する習慣もおすすめです。舌が乾燥して白っぽくなっていたり、唾液が糸を引くほどネバついていたりする場合は、水分不足のサインかもしれません。口の中は、体の健康状態を映す「健康の鏡」です。小さな変化に気づくことが、熱中症やさまざまな病気の予防につながります。
今年の夏は、エアコンや日傘だけでなく、「口の渇き」にもぜひ注目してください。毎日の水分補給と口腔ケアを習慣化することが、熱中症予防だけでなく、歯周病や糖尿病など全身の健康を守る第一歩になります。
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