夏になると熱中症による救急搬送のニュースを目にする機会が増えます。しかし、多くの方は「めまい」「頭痛」「吐き気」といった症状には注意していても、「口の渇き」が熱中症の初期サインであることはあまり知られていません。
私は歯科医師として診療を行う中で、お口の乾燥が全身の健康状態を映し出す重要なサインであることを日々実感しています。
私たちの体は、汗をかくことで体温を調節しています。その際、水分だけでなくナトリウムなどの電解質も失われます。すると体は生命維持を優先するため、唾液の分泌量を減らし始めます。その結果、「口がネバネバする」「唇が乾く」「舌がヒリヒリする」といった症状が現れます。
この状態を放置すると、脱水がさらに進み、体温調節機能が低下して熱中症へと進行する危険があります。
さらに、お口の乾燥は口臭、虫歯、歯周病のリスクを高めます。唾液には細菌の増殖を抑え、口の中を洗い流す働きがありますが、唾液が減ることで細菌が増えやすくなり、お口の環境は急速に悪化します。
特に注意が必要なのは高齢者です。加齢により唾液の分泌量が減少しやすく、のどの渇きを感じにくくなるため、自覚症状がないまま脱水や熱中症になるケースも少なくありません。また、高血圧や糖尿病などで服用している薬の中には、副作用として口の渇きを起こしやすいものもあります。
熱中症予防には、「のどが渇く前」に水分を補給する習慣が重要です。外出時には帽子や日傘を活用し、エアコンを適切に使用して室温を管理しましょう。大量に汗をかいた場合は、水だけでなく電解質を含む飲み物も取り入れると効果的です。
歯科医師としておすすめしたいのは、毎日鏡で舌や口の中を観察することです。「舌が乾いている」「唾液が少ない」「口臭が強くなった」と感じたら、体からのSOSかもしれません。早めに水分補給を行い、必要に応じて医療機関を受診しましょう。
口の健康は全身の健康につながっています。暑い夏を元気に乗り切るためにも、「口の渇き」を軽視せず、毎日のセルフチェックと適切な口腔ケアを習慣にしてください。小さな気づきが、熱中症の予防だけでなく、健康寿命を延ばす第一歩になるでしょう。


コメント