毎日歯を磨いているのに、なぜプラークは残るのでしょうか。歯科医師40年の診療経験から、歯ブラシが届きにくい場所や「磨いている」と「きれい」の違いを解説します。
「毎日、ちゃんと歯を磨いています」
歯科医院で、そう話される患者さんは珍しくありません。
朝も夜も磨いている。
時間もそれなりにかけている。
ところが、口の中を確認すると、歯と歯ぐきの境目や歯と歯の間にプラークが残っている。
すると患者さんから、
「ちゃんと磨いているんですけどね」
という言葉が出てきます。
私は歯科医師として40年、こうした場面を何度も見てきました。
そこで感じるのは、歯磨きの問題を「磨く時間」や「回数」だけで考えてはいけないということです。
「磨いている」と「汚れが落ちている」は違う
歯ブラシを口の中で動かしている。
これは「歯を磨いている」状態です。
しかし、それだけで口の中の汚れがすべて落ちるわけではありません。
歯には丸みがあります。
歯と歯の間には隙間があります。
そして、歯と歯ぐきの境目には、歯ブラシの毛先が入りにくい場所があります。
つまり、歯ブラシを当てているつもりでも、実際には毛先が届いていない場所があるのです。
ここが、歯磨きの大きな盲点です。
私が診療でよく見る「残り方」
歯科医院でプラークを確認すると、患者さん自身が思っている場所とは違うところに残っていることがあります。
前歯の表側は比較的きれいなのに、奥歯の内側に残っている。
歯の表面はきれいなのに、歯と歯の間に残っている。
歯そのものは磨けていても、歯ぐきとの境目に残っている。
こうしたことは決して珍しくありません。
本人からすると、
「こんなに磨いているのに」
という感覚になります。
でも、これは「歯磨きが下手」という単純な話ではありません。
自分では見えない場所、自分では当たっていると思っているけれど実際には届きにくい場所がある。
そこを知ることが重要なのです。
プラークは、ただの食べかすではない
もう一つ知っておきたいのが、歯の表面に付着するプラークです。
プラークは単なる食べかすではありません。
細菌が集まって形成する、粘着性のある集合体です。
時間がたつほど、歯の表面にしっかり付着していきます。
だから「食後に何か残っている感じがするから磨く」というだけではなく、細菌の集合体を物理的に取り除くという視点が必要になります。
そして、このプラークが歯ぐきの近くに残り続けると、歯肉の炎症につながることがあります。
「歯を磨いているから大丈夫」
ではなく、
を見る必要があります。
歯ブラシだけですべて解決しようとしない
ここで大切なのは、歯ブラシを否定することではありません。
歯ブラシは毎日の口腔ケアの基本です。
ただし、歯ブラシだけでは清掃しにくい場所があります。
代表的なのが歯と歯の間です。
そこでは、歯間ブラシやデンタルフロスなど、場所に応じた道具が役立つことがあります。
ただし、歯間の広さや歯ぐきの状態は人によって違います。
「全員が同じ道具を使えばいい」というものでもありません。
だから私は、単純に「フロスを使いましょう」と言うより、
「自分の口の中で、どこが磨けていないのかを知る」
ことを先に考えてほしいと思っています。
歯磨きは「何分」より「どこを落とすか」
毎日3分磨いている人と、毎日5分磨いている人。
時間だけを比べても、本当にきれいにできているかは分かりません。
大切なのは、
です。
例えば、いつも同じ場所から磨き始めて、同じ場所で終わっているなら、磨き方に偏りがないか確認してみる。
奥歯の内側、歯と歯の間、歯ぐきとの境目など、意識して確認する。
歯科医院でプラークの残り方をチェックしてもらうのも一つの方法です。
自分の感覚だけでは分からない「磨き残し」を知ることができます。
「ちゃんと磨いているのに」という人へ
40年の診療経験から、私は「もっと頑張って磨いてください」とだけ伝えることには限界があると感じています。
必要なのは、努力を増やすことだけではありません。
磨き方を知ること。
自分の弱い場所を知ること。
必要なら道具を変えること。
この3つです。
それは、あなたが怠けているからとは限りません。
まずは「自分はちゃんと磨いている」と思うところから一歩進んで、
「では、どこが本当にきれいになっているのだろう?」
と考えてみてください。
そこから、歯磨きは「習慣」から「予防」へ変わっていきます。
この記事のポイント
- 歯を磨いていることと、汚れが落ちていることは同じではない
- 歯と歯の間や歯ぐきとの境目は、プラークが残りやすい
- プラークは単なる食べかすではなく、細菌の集合体
- 歯ブラシだけでは清掃しにくい場所がある
- 大切なのは「何分磨いたか」だけではなく「どこを清掃できたか」
- 自分の磨き残しを知ることが、予防の第一歩になる
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