「最後に歯医者へ行ったのは、いつだっただろう」
そう聞かれて、すぐに思い出せない方もいるかもしれません。
仕事が忙しくて時間が取れなかった。子どものことや家のことで、自分のことは後回しになっていた。痛みもないので、特に困ることがなかった。
30代、40代、50代は、そんな毎日を送っている方が少なくないと思います。
一方で、何年も歯医者に行っていないと、今さら受診するのも気が引ける。悪くなっていると言われたらどうしよう。そんな気持ちになることもあるでしょう。
では、歯が痛くなければ、今すぐ歯医者へ行く必要はないのでしょうか。
歯科医師として40年、私がまずお伝えしたいのは、痛みがないことだけでは、歯や歯ぐきの健康状態は判断できないということです。
痛くないから大丈夫、とは言い切れない
虫歯というと、冷たいものがしみたり、ズキズキ痛んだりする状態を想像する方が多いと思います。
しかし、虫歯は初期の段階では自覚症状がないことがあります。歯周病も同じで、進行していても強い痛みを感じない場合があります。
毎日きちんと歯を磨いているつもりでも、歯と歯の間や歯ぐきの境目など、自分では確認しにくい場所に問題が見つかることもあります。
もちろん、何年も歯医者に行っていないからといって、必ず虫歯や歯周病が進んでいるわけではありません。
大切なのは、痛みの有無だけで判断せず、今の状態を確認することです。
こんな変化があれば、一度相談してほしい
久しぶりの受診を考えるときは、日頃の口の変化を振り返ってみてください。
- 歯磨きをすると、歯ぐきから血が出る
- 以前より口臭が気になる
- 歯ぐきが下がったように感じる
- 食べ物が歯と歯の間に挟まりやすくなった
- 歯が浮く感じや、噛みにくさがある
こうした変化には、歯周病や虫歯などが関係していることがあります。ただし、症状だけで原因を決めつけることはできません。
症状が続く場合は、歯科医院で確認してもらいましょう。強い痛みや腫れがある場合は、定期検診を待たずに早めの受診が必要です。
何年も行っていない人は、何を診てもらえばいい?
久しぶりに歯科医院へ行くとき、最初から治療のことばかり心配しなくても大丈夫です。
まずは、現在の口の中の状態を知ることから始めましょう。
1.虫歯がないか
目で見える場所だけでなく、歯と歯の間など、確認が必要な場所も診てもらいます。必要に応じてレントゲンなどの検査を行うことがあります。
2.歯ぐきや歯周病の状態
歯ぐきの腫れや出血、歯周ポケットなどを確認し、歯周病の可能性や進行の程度を調べます。
3.歯石や磨き残しの状態
自分ではきれいに磨いているつもりでも、歯ブラシが届きにくい部分に汚れが残ることがあります。歯磨きの方法や、自分に合った清掃用具について相談するのもよいでしょう。
4.これから必要なケア
検査の結果によって、すぐに治療が必要な場合もあれば、経過を確認しながら予防を続けられる場合もあります。どのような対応が必要か、説明を受けてから相談して決めていきましょう。
すべての人に同じ検査や治療が必要なわけではありません。口の状態に合わせて進めることが大切です。
「何年も来ていません」と遠慮しなくていい
診療の場で、久しぶりの受診を申し訳なさそうに話す方がいます。
でも、過去に受診できなかった事情は、人それぞれです。忙しかった方もいれば、歯科治療が苦手だった方もいるでしょう。
大切なのは、来なかったことを責めることではなく、これからどう歯を守っていくかを考えることです。
受診するときは、「何年も歯医者に行っていません」「痛みはないけれど、一度状態を確認したいです」と、そのまま伝えてください。
治療が怖い方は、そのことも事前に相談しておくとよいでしょう。不安を伝えることも、安心して診療を受けるための大切な一歩です。
歯を守るために、今日できること
歯を失う原因は一つではありません。虫歯や歯周病だけでなく、噛み合わせや生活習慣など、さまざまな要因が関わることがあります。
だからこそ、痛くなってから対処するだけでなく、問題がないかを確認し、必要なケアを続けることに意味があります。
何年も歯医者に行っていない方は、まず一度、受診の予定を考えてみてください。
「もっと早く行けばよかった」と後悔するためではありません。今の自分の歯を知り、これから先も自分の歯で食べるためです。
歯科医師として40年、私が伝えたいのは、歯を守るために始めるのに、遅すぎると決めつける必要はないということです。
痛くない今だからこそ、一度、自分の歯と向き合ってみませんか。
※この記事は一般的な情報を提供するもので、個々の診断に代わるものではありません。気になる症状がある場合は、歯科医院にご相談ください。


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