昨日まで歯がズキズキしていたのに、今日は痛くない。
「あれ、治ったのかな」
そう思って、歯医者の予約を取り消したくなったことはありませんか。
歯が痛いときは、仕事も食事も気になって仕方がない。ところが痛みがなくなると、不思議なくらい歯のことを忘れてしまいます。
歯科医師として40年、患者さんの歯を診てきました。
その経験から言うと、ここには一つ注意してほしいことがあります。
歯が痛くなくなったことと、歯の原因がなくなったことは同じではありません。
むしろ、場合によっては「痛みがなくなったからこそ、診てもらってほしい」ということもあります。
痛みがなくなったら、本当に治ったのでしょうか
歯の痛みには、いろいろな原因があります。
虫歯、歯の神経の炎症、歯の根の炎症、歯周病、歯にひびが入っている場合など、一口に「歯が痛い」といっても同じではありません。
だから、
「痛かった」
↓
「痛くなくなった」
↓
「治った」
とは、必ずしも言えないのです。
特に気をつけたいのは、強い痛みがあったのに、治療を受けないまま急に痛みがなくなった場合です。
強い痛みが消えたとき、歯の中で何が起きているのか
例えば、虫歯が深くなって歯の神経に炎症が起きると、強い痛みが出ることがあります。
そのまま進行すると、歯の神経が大きなダメージを受け、最終的に神経が機能しなくなることがあります。
すると、それまであった痛みを感じにくくなることがあります。
患者さんからすれば、
「やっと治った」
と思うかもしれません。
しかし、歯科医師から見ると、必ずしも喜ばしい変化とは限りません。
痛みを感じなくなっただけで、原因が消えたわけではない場合があるからです。
実際、「一度すごく痛かったけれど、我慢していたら痛みがなくなった」という相談は、歯科では珍しいものではありません。
「痛くない歯」には、二つの意味があります
ここは、ぜひ覚えておいてください。
「痛くない」という状態には、
①本当に問題がなく、痛みがない
場合と、
②問題は残っているけれど、今は痛みを感じていない
場合があります。
この二つは、自分の感覚だけでは区別できません。
だからこそ、以前は強く痛んでいた歯については、痛みがなくなったことだけを理由に「大丈夫」と判断しないほうがいいのです。
歯周病は、そもそも「痛くない」ことがあります
もう一つ忘れてはいけないのが歯周病です。
歯周病は、虫歯のように「痛いから病気に気づく」とは限りません。
歯ぐきから血が出る。
歯ぐきが腫れる。
口の中が以前より気になる。
歯が少し動くような感じがする。
口臭が気になる。
こうした変化があっても、強い痛みがないことがあります。
そのため、
「痛くないから歯医者には行かなくていい」
という考え方は、歯周病については特に危険です。
痛みの有無だけでは、歯を守れるかどうかは判断できません。
では、どんなときに歯医者へ行けばいいのか
私なら、次のように考えてほしいと思います。
強く痛んだ歯の痛みが急に消えた
これは一度、歯科医院で確認してもらったほうがいいでしょう。
痛みを何度も繰り返している
「また痛くなったら行こう」と先延ばしにするのではなく、一度原因を調べてもらうことをおすすめします。
歯ぐきが腫れている、膿のようなものが出る
痛みがなくても放置しないでください。
噛むと違和感がある
痛みが強くなくても、歯や歯の根の周囲に問題がないか確認する価値があります。
冷たいもの、熱いものがしみる状態が続いている
一時的なものなのか、歯の中に問題があるのかは、症状だけでは判断できません。
そして、顔が腫れている、発熱がある、口が開けにくい、飲み込みにくい、息苦しいといった症状がある場合は、単に「次の検診まで待とう」と考えず、早めに医療機関へ相談してください。
「痛くないから行きたくない」は、よく分かります
私は歯科医師ですから、「歯医者に行ってください」と簡単に言ってしまいがちです。
でも、患者さんの立場からすれば、
「今は痛くないのに行くの?」
と思うのも当然です。
仕事がある。
時間がない。
歯医者が怖い。
以前の治療でつらい思いをした。
治療費が心配。
いろいろな理由があります。
だから私は、ただ「早く歯医者へ行きましょう」と言うだけではなく、
「今の歯が本当に大丈夫なのかを、一度確認しておく」
という考え方をしてほしいと思っています。
治療が必要なら治療する。
問題がなければ安心できる。
どちらにしても、自分の歯の状態が分かります。
歯を残すために大切なのは「痛み」だけを基準にしないこと
歯は、痛くなったときだけ大切にするものではありません。
痛くなる前。
痛みがなくなったとき。
歯ぐきに小さな変化が出たとき。
そして、何も症状がないとき。
その一つ一つの時期に、歯を守るチャンスがあります。
歯科医師として40年、たくさんの患者さんを診てきました。
その中で感じるのは、**「もっと早く来てくれていたら、もう少し歯を残せたかもしれない」**という場面が決して少なくないことです。
だから、今日この記事を読んで、
「そういえば、前に痛かった歯がある」
「痛みはなくなったけれど、まだ歯医者に行っていない」
と思ったなら、一度自分の歯を振り返ってみてください。
歯が痛くなくなったことは、安心材料の一つかもしれません。
でも、それだけで「もう大丈夫」と決める必要はありません。
自分の歯を残すために、本当に大切なのは、
「痛いか、痛くないか」だけではなく、「なぜ痛かったのか」を知ることです。
40年歯科医師を続けてきた私から、今日お伝えしたいのはこの一点です。
歯が痛くなくなったからといって、必ずしも歯が治ったとは限りません。
痛みがあった歯ほど、一度その状態を確認してもらってください。
歯を残せる時間は、痛みがなくなった瞬間からも続いています。
を自然に入れています。


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